超高齢社会となる日本では認知症はとても身近な問題です。
敦賀市立看護大学の中堀伸枝氏らによると『2045年には認知症高齢者が25%を超える』という統計が発表されました。
認知症を疑うような症状にはどのようなものがあるでしょうか?
認知症とはどのような症状なのでしょうか?
この記事では、認知症を疑う症状と4種類の認知症の特徴について解説していきます。
認知症を疑う症状

認知症は、認知能力(記憶、思考、注意力など)に障害をきたす疾患の総称です。主に老年者に見られますが、年齢に関係なく発症することもあります。
認知症を疑う症状には、次のようなものがあります。
- 記憶力の低下
- 注意散漫
- 感覚や知覚の変化
- 認知能力の減退(計算や決定力など)
- 感情や行動の変化
- 社交スキルの減退
- 日常生活のスキルの減退
ただし、これらの症状は他の疾患や病気にも見られるため、正確な診断は医師によって行われる必要があります。
認知症であらわれる主な症状

認知症は、脳の障害や損傷によって引き起こされる病気であり、徐々に進行するため、症状は時間とともに悪化する傾向があります。
主な症状は以下の通りです。
記憶力の低下
記憶力の低下は、認知症の最も一般的な症状の1つです。
患者は、過去の出来事や新しい情報を覚えるのが困難になります。
最初は、覚えることが難しいという単純な問題から始まり、ついには家族や親しい人の顔や名前すらも忘れることがあります。
注意散漫
患者は、集中力が低下し、注意散漫になります。
例えば、話を聞かないでいることが多い、テレビや本を読んでいる途中で気が散ってしまうなどです。
感覚や知覚の変化
認知症の患者は、自分の身体に関する感覚を失い、物事の見方や感じ方が変わります。
例えば、自分がどこにいるのか分からない、部屋の中にいるのに、外にいると思い込んでしまうことがあります。
認知能力の減退
患者は、計算や意思決定などの複雑な認知タスクを実行する能力が低下します。
時間や場所の判断ができなくなるため、予定を守れなくなることがあります。
感情や行動の変化
認知症の患者は、感情や行動が不安定になります。
怒りっぽくなることがあり、感情のコントロールができなくなるため、周囲の人に対して攻撃的になることがあります。
社交スキルの減退
認知症の患者は、人との交流が困難になります。
言葉を理解することができなくなるため、コミュニケーションが取りにくくなります。
日常生活のスキルの減退
認知症の患者は、日常生活のスキルが低下します。
自分で食事を作ったり、洗濯をしたりすることができなくなり、身の回りのことに対応することが困難になります。
また、家事や買い物などの日常の活動が困難になるため、介護が必要になる場合があります。
これらの症状は、認知症の種類や進行度合いによって異なることがあります。
認知症の種類は主に4種類で、アルツハイマー型認知症・血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症があり、それぞれに独自の特徴があります。
また、認知症は徐々に進行するため、症状が重くなるにつれて、生活に影響が出るようになります。
認知症には現在、特定の治療法がなく、予防や早期発見、介護が重要とされています。
認知症にならないようにするためには、健康的な生活習慣を維持すること、社交的な活動や認知機能トレーニングを行うことが推奨されています。
また、認知症の症状が現れた場合には、早期に医療機関を受診し、適切な介護を受けることが重要です。
4種類の認知症とは?

認知症は主に4種類に分けられます。
- アルツハイマー型認知症
- 血管性認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
アルツハイマー型認知症
記憶障害:初期症状の1つであり、短期記憶が特に影響を受けます。
日々の出来事や新しい情報を覚えることが困難になります。
言語障害:言葉の理解や話すことが困難になります。
単語の忘れ方や、文章を理解することができなくなる場合があります。
運動障害:歩行や手の使い方などの身体的動作が不安定になることがあります。
認知機能の低下:思考力や判断力が低下するため、日常生活に支障をきたすことがあります。
また、計算や時計を見ることが困難になることもあります。
空間認知能力の低下:物の位置や方向を把握する能力が低下することがあります。
行動や性格の変化:無目的な動き、感情の起伏が激しくなる、社会的ルールを守らなくなるなどの変化が見られることがあります。
アルツハイマー型認知症は、症状の進行度合いや症状の出現順序は人によって異なるため、必ずしもすべての症状が現れるわけではありません。
また、症状が進行するにつれて、より複雑な症状が現れることがあります。
脳血管性認知症
脳卒中の既往歴:多くの場合、脳血管性認知症は、脳卒中の既往歴がある患者さんに見られます。
突然の症状発現:アルツハイマー型認知症とは異なり、突然の症状発現が特徴的です。
片麻痺や感覚障害:脳血管性認知症は、脳卒中によって生じた脳の損傷によって起こるため、片麻痺や感覚障害などの神経症状が見られることがあります。
思考力の低下:思考力の低下が見られることがあります。
また、記憶障害や言語障害も起こることがありますが、アルツハイマー型認知症とは異なり、軽度の場合もあります。
歩行障害:歩行障害が見られることがあります。
脳卒中によって生じた脳の損傷によって、歩行に必要な部分の機能が低下することが原因と考えられています。
脳機能低下の進行がゆっくり:アルツハイマー型認知症と比べて、脳機能低下の進行がゆっくりとした場合が多いとされています。
脳血管性認知症は、原因となる脳卒中や脳梗塞の部位や範囲によって、症状の種類や進行度合いが異なるため、必ずしもすべての症状が現れるわけではありません。
レビー小体型認知症
認知症症状:記憶障害や言語障害、計算能力の低下など、認知症症状が見られます。
アルツハイマー型認知症に似た症状が現れることが多いですが、アルツハイマー型認知症とは異なる独自の特徴があります。
神経症状:レビー小体型認知症は、レビー小体という特殊な神経細胞の異常が原因とされます。
そのため、幻覚や錯覚、運動症状(手の震え、筋肉の硬直など)などの神経症状が見られることがあります。
注意力の低下:注意力の低下が見られることがあります。
突然の意識の混乱や、環境の変化に敏感に反応することがあるとされています。
うつ症状:うつ症状が見られることがあります。
運動症状や幻覚、錯覚などの神経症状が原因で、うつ症状が出現することもあります。
睡眠障害:睡眠障害が見られることがあります。
レム睡眠行動障害(夢の中で暴れたり、寝言を言ったりする症状)が多く見られることが特徴的です。
薬物反応性:抗精神病薬や抗不安薬などの薬物に敏感であり、副作用を引き起こすことがあるため、投薬には注意が必要です。
レビー小体型認知症は、症状の進行度合いや症状の出現順序は人によって異なるため、必ずしもすべての症状が現れるわけではありません。また、症状が進行するにつれて、より複雑な症状が現れることがあります。
前頭側頭型認知症
行動・性格の変化:前頭側頭型認知症では、思考力や判断力の低下に加え、行動や性格の変化が見られることが多いです。
例えば、社交的な人が孤立するようになったり、好き嫌いがはっきりしたり、軽薄な言動が目立つようになったりすることがあります。
抽象的思考能力の低下:前頭側頭型認知症は抽象的思考に関わる領域があります。
前頭側頭型認知症では、抽象的な概念を理解する能力が低下し、絵画や音楽、ジョークなどを理解できなくなることがあります。
記憶障害:初期の段階では、アルツハイマー型認知症に似た記憶障害が見られることがありますが、後期になると前頭側の萎縮が進み、短期記憶よりも長期記憶の方が比較的良好である場合があります。
言語障害:前頭側頭型認知症では、言語障害が見られることがあります。
言葉を話すことが困難になったり、単語を取り違えることがあったりします。
空間認知障害:前頭側頭型認知症では、空間認知障害が見られることがあります。
道に迷うことがあったり、二次元の画像を三次元の物体と誤認することがあったりします。
計画能力・実行機能の低下:前頭側頭型認知症では、計画能力や実行機能が低下することがあります。
具体的には、何をするべきかを考えることが難しくなり、日常生活の動作に困難を感じるようになります。
前頭側頭型認知症は、症状の進行度合いや症状の出現順序は人によって異なるため、必ずしもすべての症状が現れるわけではありません。
まとめ
この記事では、認知症を疑う症状と4種類の認知症の特徴について解説してきました。
認知症への理解を深めることで、冷静に対応できることもあります。
また、早期発見も重要です。
あれ?おかしいな?と思ったら早めの病院受診をおススメします。